大乗院薬王寺

住職のごあいさつ

住職

大乗院薬王寺 住職 田中清元

唯我独尊

ようやく薫風到来、春が来た。桜吹雪に続いて、すべての花々が咲き揃い、新緑がその華やかさを一層惹き立てます。毎冬、厳寒豪雪に耐える北海道民だからこそ、味わい深い季節なのです。
春は仏教界ではとても大切な「花まつり」があります。お釈迦様の誕生日です。本来は四月八日ですが、北国では雪が解け草花が生い茂る五月の初めに変わってきたようです。
花まつりになると「何故、誕生日が花まつりなの」「何故、甘茶を掛けるの」「仏様が合掌ではなく、何故上下を指してしるの」と質問されて答えに困ったとよく聞きます。
子供のころ、誰もが知る昔話や逸話が、時代や興味関心の変遷でなくなってきている。子供達にとっては、辛気臭く、ストーリーに飛躍がない話はつまらなく、刺激的で簡単なゲームやアニメに関心がいくようですが、昔話には知恵や教訓が沢山あり、何よりも人生の歩み方すら変えてしまう教えがあります。これは脈々と続く御先祖様からの尊い命のメッセージなのです。
花まつりの逸話はこうです。
お釈迦様誕生の際、突然上空に雲が現れて香ばしい雨が降り注ぎました。その雨水を吸った地面から無数の花々が大地をおおい、二匹の竜がお祝いに現れたと云われます。仏教と花が一体なのもお釈迦様に甘茶を注ぐのも、この由縁からなのです。
現代においても、仏教の冠婚葬祭が他の宗教より多くの花に彩られ、アジア仏教国では賓客の道筋を花びらでおもてなしすのも、お釈迦様誕生の逸話から来ているのです。
お釈迦様はお生まれになってすぐ、東西南北四方を各七歩進み、右手は天を左手は地を指差し「天上天下唯我独尊」と唱えたそうです。これが花まつりにしか見られないお釈迦様のお姿です。
この「唯我独尊」の言葉は、今では「独りよがり」「自己中」の意味で使われがちです。しかし、「私こそはこの世で類なき者である」の教えは、老若男女、人種、宗教、貧富を問わず、この世の人々は、誰もが皆、平等で尊い存在であると諭されたのです。
自分が尊い存在なら同じ他人も尊い。自分の尊さを自覚したら、自分以外の人の尊さに気付かなければなりません。尊敬とともに互いを認め合うことで、世界の争いも身近な不和も消えていく。仏教の花まつりは、それを教えてくれる場なのです。
灌仏会は日本に仏教伝来の約千五百年前から行われていたとい言われる祭りです。当山の花まつりは五月十一日です。是非、お子様とご一緒に、お釈迦様誕生の謎解きで語り合うことをお勧めします。

合掌

住職

大乗院薬王寺

住職

田中清元

唯我独尊

 ようやく薫風到来、春が来た。桜吹雪に続いて、すべての花々が咲き揃い、新緑がその華やかさを一層惹き立てます。毎冬、厳寒豪雪に耐える北海道民だからこそ、味わい深い季節なのです。
 春は仏教界ではとても大切な「花まつり」があります。お釈迦様の誕生日です。本来は四月八日ですが、北国では雪が解け草花が生い茂る五月の初めに変わってきたようです。
 花まつりになると「何故、誕生日が花まつりなの」「何故、甘茶を掛けるの」「仏様が合掌ではなく、何故上下を指してしるの」と質問されて答えに困ったとよく聞きます。
 子供のころ、誰もが知る昔話や逸話が、時代や興味関心の変遷でなくなってきている。子供達にとっては、辛気臭く、ストーリーに飛躍がない話はつまらなく、刺激的で簡単なゲームやアニメに関心がいくようですが、昔話には知恵や教訓が沢山あり、何よりも人生の歩み方すら変えてしまう教えがあります。これは脈々と続く御先祖様からの尊い命のメッセージなのです。
 花まつりの逸話はこうです。
 お釈迦様誕生の際、突然上空に雲が現れて香ばしい雨が降り注ぎました。その雨水を吸った地面から無数の花々が大地をおおい、二匹の竜がお祝いに現れたと云われます。仏教と花が一体なのもお釈迦様に甘茶を注ぐのも、この由縁からなのです。
 現代においても、仏教の冠婚葬祭が他の宗教より多くの花に彩られ、アジア仏教国では賓客の道筋を花びらでおもてなしすのも、お釈迦様誕生の逸話から来ているのです。
 お釈迦様はお生まれになってすぐ、東西南北四方を各七歩進み、右手は天を左手は地を指差し「天上天下唯我独尊」と唱えたそうです。これが花まつりにしか見られないお釈迦様のお姿です。
 この「唯我独尊」の言葉は、今では「独りよがり」「自己中」の意味で使われがちです。しかし、「私こそはこの世で類なき者である」の教えは、老若男女、人種、宗教、貧富を問わず、この世の人々は、誰もが皆、平等で尊い存在であると諭されたのです。
 自分が尊い存在なら同じ他人も尊い。自分の尊さを自覚したら、自分以外の人の尊さに気付かなければなりません。尊敬とともに互いを認め合うことで、世界の争いも身近な不和も消えていく。仏教の花まつりは、それを教えてくれる場なのです。
 灌仏会は日本に仏教伝来の約千五百年前から行われていたとい言われる祭りです。当山の花まつりは五月十一日です。是非、お子様とご一緒に、お釈迦様誕生の謎解きで語り合うことをお勧めします。

合掌

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